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品種改良の歴史とゲノム編集の今日的意義

植物は自身のDNA配列を変化させることにより環境の変化に適応することができます。様々な環境からのストレス、例えば日射などによって体内に誘導される小分子がDNAを無作為に破壊することがありますが、そのDNAの修復中に起きるエラーが突然変異の原因です。自然発生する突然変異は植物が生き残り、進化するためにいわば必須の基本的な生命現象です。このような自然発生的な突然変異は特定の遺伝子に起こるのではなく、又、植物にとってそれらの多くは中立的であり、影響がありません。しかし時には有害にもなり恩恵にもなります。研究者達は例えば干ばつでも収量がある品種や病害虫抵抗がある品種を作るために有益な突然変異を持つ植物を選抜します。この過程を育種と言い、育種家が、無作為に発生した突然変異により有益な形質を発現した植物を探し出すことです。遺伝子マーカー(望ましい形質と連動する植物が持っているDNA配列)や、化学薬品や放射線により人工的に突然変異を起こすことにより、有益な突然変異を見つけ出す機会を増やすことが出来ます。しかしこのような伝統的育種は無駄が多く効率的ではありませんでした。

環境条件は常に変化し、植物が進化するように病害虫も進化するので活発な害虫が新たに生まれ続け植物を攻撃し続けることになります。その結果、現在の育種技術でも植物を完全には防除することが出来ない多くの病害虫が存在します。干ばつ、高温、地中の窒素不足は作物が生育時にさらされる幾多の不利な環境条件の中のいくつかの例でしかありません。このような問題は特定の作物で世界的に広がっています。地球はますます都市化し、地球規模の温暖化、農地の減少、人口増加、発展途上国での食糧危機、栄養価が高く高品質の食料に対する消費者の需要が生じています。このような切迫した問題を将来世代のために解決すべく、真剣な作物育種への挑戦が始まっています。

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幸いにも、多くの科学的進歩により品種改良は進歩しました。その結果、植物育種は人類の食料増産の決め手の一つとなっています。ゲノム編集技術は近代における植物育種の最新のブレークスルーなのです。育種家達が今までの伝統的育種方法と同じ成果、あるいはそれ以上の成果を、より早く、無駄な資源を使わずに効率的に達成することが出来るので“迅速植物育種技術”としばしば言われています。

ゲノム編集は科学的知見に基づいた技術です。今日、作物の有用な表現形質とそれを制御する遺伝子の実態についての理解が進んだことにより、有用形質を発現する特定遺伝子に的を絞った改良が可能となりました。CRISPRを利用した効率よく使いやすいゲノム編集技術が開発されるまで、そのような的を絞ったゲノム編集は不可能でした。今、私達は、CRISPRによるゲノム編集を利用して地球規模の農業生産の諸問題解決に向けて進むことが出来るようになりました。食料が人間にとって安全で健康的であることが重要であるのと同時に、地球環境にとっても持続可能であることが重要です。

ゲノム編集は多くの作物で多様な利用が期待されます。例えば、不良環境条件下での収量増、病害抵抗性、栄養品質の向上などで利用出来ます。

民間及び公的機関の専門家達が食料の安全性向上や環境保全、その他のためにゲノム編集技術の用途拡大に努力しています。人類の進歩は技術の進化によってもたらされています。私達はゲノム編集技術が明日の子供達、明日の地球のための健康で安全な食料を増産するために利用されると強く信じています。