筑波大学発ベンチャーのサナテックライフサイエンス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:竹下心平)は、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)」(注1)を用いて、高濃度の「GABA(ギャバ)」(注2)蓄積と、高吸収型リコピンである「シスリコピン」の蓄積を同時に実現した新規トマト系統(#70a-23および#6-16)について消費者庁および農林水産省への届出プロセスを完了いたしましたのでお知らせいたします。
本開発では、2つの遺伝子を同時に改変(マルチターゲット改変)するアプローチを採用し、1つの品種で複数の有用な形質を併せ持つ次世代の農産物の社会実装に向けた重要な成果を得ました。
届出にあたりサナテックライフサイエンス株式会社は、消費者庁 食品衛生基準審査課 新開発食品保健対策室に食品としての取り扱いの事前相談を、また、農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課には、生物多様性への影響に関する事前相談をしており、今般これらの事前相談が終了したことから、今回の届出に至りました。
食用としての流通を考えていますが、規格外果実の処理等で飼料利用がある可能性があるため、農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課へも飼料利用として届出をしています。 届出情報は以下のそれぞれの省庁のホームページにて公表されております。
(1)食品安全について:消費者庁 食品衛生基準審査課 新開発食品保健対策室
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/bio/genome_edited_food/list
(2)生物多様性影響について:農林水産省 農産安全管理課
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/nbt_tetuzuki.html
(3) 飼料安全について:農林水産省 畜水産安全管理課
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/ge_todokede.html
本技術の開発背景および特筆すべき点
当社では、健康維持に寄与する機能性成分として注目される「GABA」を豊富に蓄積させたトマトの品種開発および社会実装を推進してまいりました。
本件においては、GABAの合成に関与する遺伝子の制御に加え、カロテノイドの代謝を司る酵素の遺伝子を同時に改変いたしました。これにより、一度に血圧抑制に資する「高GABA」と、吸収効率に優れた「高シスリコピン」の双方を兼ね備えた次世代トマトの育種に成功しました。
シスリコピンについて
一般的にトマトに含まれる赤色色素「リコピン」の多くは、分子構造がまっすぐな「トランス型(All-trans-lycopene)」として天然に存在しています。 一方で、人間の体内や動物の組織内に存在しているリコピンの多くは、分子が折れ曲がった構造を持つ「シス型(cis-lycopene)」です。 シスリコピンは、通常のトランスリコピンと比較して体内への吸収性が極めて高い(約8.5倍)ことが報告されています(Cooperstone et al., 2015)。
#70a-23および#6-16では、遺伝子改変によりシス型からトランス型への変換を抑えることで、果実中に「シスリコピン」を高濃度(#70a-23で野生型の約3.3〜3.4倍、#6-16で野生型の約2.1〜2.6倍)に蓄積させることに成功しました。
リコピンは加熱調理などを介すと吸収率が高まることが知られていますが、生で食べても効率よくリコピンを摂取することが期待できます。
販売計画と表示について
まだ販売計画については未定です。
販売する際には現在販売しているハイギャバ®️トマトと同様に家庭菜園用苗や食品には、以下のマークを表示し、ゲノム編集技術で開発したことが分かるようにいたします。
問い合わせ先
サナテックライフサイエンス株式会社
E-mail:info@sls.sanatech-seed.co.jp
注釈
注1 クリスパー・キャス・ナイン(CRISPR/Cas9)とは
1953年にDNAの二重らせん構造が発見されてから、人間、動物、植物など多くの生物の遺伝子構造が詳細に研究され、異なった遺伝子のそれぞれの役割が発見され続けています。世界中の科学者による研究の末、2012年、スウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ氏とアメリカ、カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ氏がゲノム編集技術「クリスパー・キャス・ナイン(以下CRISPR/Cas9)」を開発しました。この技術は、生物の持つDNAに外部の他の種のDNAを導入することなく、狙った遺伝子のみを的確に変異させることを可能とするものです。これにより従来の品種改良技術と比べて、効率の良い品種開発を行うことが可能です。この技術は次世代の農作物開発にとって大きな可能性を秘めており、食料の持続的な確保と同時に栄養、加工、貯蔵、健康(アレルギー誘発の減少など)面からの食料の品質改善に貢献するものと期待されています。エマニュエル・シャルパンティエ氏とジェニファー・ダウドナ氏は、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」の開発により2020年ノーベル化学賞を受賞しました。
サナテックライフサイエンス株式会社は、Corteva Agriscience社およびBroad 研究所(Broad Institute of MIT and Harvard)から非独占的研究・商業ライセンスを受け、この技術を使用しています。
注2 GABA(ギャバ)とは
GABA(ギャバ)はアミノ酸の一つで、抑制性の神経伝達物質として知られています。血圧上昇の抑制やストレス緩和効果があることが報告されています。
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